PT100 計算ツールの仕組み
PT100 は、0 °C で 100 Ω の抵抗値をもつ白金測温抵抗体です。同じ温度で PT500 は 500 Ω、PT1000 は 1000 Ω で、3 つとも同じ特性を公称抵抗値 R₀ で比例させたものです。この特性は IEC 60751 で、Callendar–Van Dusen 式により定められています。
R(t) = R₀ [1 + A·t + B·t² + C·(t − 100)·t³]
A = 3.9083 × 10⁻³、B = −5.775 × 10⁻⁷、C = −4.183 × 10⁻¹² です。C の項は 0 °C 未満でのみ使い、0 °C 以上では単純な 2 次式になります。これらの係数から、0~100 °C の平均温度係数 α = 0.00385 Ω/Ω/°C が得られます。データシートでこの特性が「385」や「欧州型」白金と呼ばれるのはこのためです。
このツールは双方向に計算できます。温度を入力すると式をそのまま計算し、抵抗値を入力すると温度を逆算します。0 °C 以上では 2 次方程式の解の公式で厳密に、0 °C 未満では 4 次の項があり閉じた解が扱いにくいため、ニュートン法で求めます。両方向の結果は −200~850 °C の全範囲で 100 万分の 1 度以内で一致するため、簡易確認だけでなく校正作業にも使えます。
計算例:100 °C の PT100
100 °C での PT100 の抵抗値は 138.506 Ω です。ツールには次の値も表示されます。
- 感度 0.3793 Ω/°C。この温度での特性の傾きです。0 °C では 0.3908 Ω/°C で、温度が上がるにつれてゆるやかに下がります。したがって 100 °C での 1 Ω の誤差は約 2.64 °C に相当します。
- クラス AA 許容差 ±0.27 °C(±0.102 Ω)、クラス A ±0.35 °C(±0.133 Ω)、クラス B ±0.80 °C(±0.303 Ω)。IEC 60751 では許容差を固定分と |t| に比例する分の和で定めているため、高温側と低温側で許容差が広がります。
同じ素子を PT1000 にすると、100 °C で 1385.055 Ω となり、PT100 のちょうど 10 倍です。0 °C 未満では特性の曲がりが大きくなり、−100 °C で PT100 は 60.256 Ω です。
逆に、110 Ω の読みは 25.68 °C に相当します。センサを作業台で室温に置いたときの確認によく使われる値です。
抵抗値表
変換欄の下の表には、任意の範囲と刻みで抵抗値と感度が °C または °F で表示されます。行をクリックすると、その温度が変換欄に読み込まれます。全範囲を印刷したりダウンロードしたりする場合は、PT100 抵抗値表、PT1000 抵抗値表、PT500 抵抗値表 を使ってください。いずれも 1 度刻みの CSV ファイル付きです。
PT100 か PT1000 か
どちらも同じ規格に従うため、選択は許容差クラスではなく測定回路で決まります。
- 導線抵抗の影響は PT1000 なら 10 分の 1。 ケーブル抵抗 1 Ω は、PT100 では約 2.6 °C、PT1000 では約 0.26 °C の誤差になります。2 線式では PT1000 が現実的な選択になることが多くあります。お使いのケーブルでの影響は 測温抵抗体の導線誤差計算 で確認できます。
- 自己加熱は PT1000 のほうが小さい。 同じ測定電圧なら電流が小さくなるためです。
- 工業用の標準は PT100。 ヘッド取付形変換器、PLC のアナログ入力カード、校正器のほとんどが 3 線式・4 線式の PT100 に対応しており、プロセス用プローブの在庫品も多くが PT100 です。
よくある間違い
特性を取り違える。 古い米国製や日本製の素子には、α = 0.00385 ではなく 0.003916 や 0.00392 のものがあります。100 °C での抵抗値がはっきり高く(138.5 Ω ではなく約 139.2 Ω)、約 1.7 °C 高く読まれます。データシートに IEC 60751 または α = 0.00385 の記載がない場合は、このツールを使う前に確認してください。
導線抵抗を無視する。 2 線式の PT100 をテスタで測ると、両方の導線が読みに含まれます。細いケーブルや長いケーブルでは、誤差がセンサの許容差を簡単に超えます。
許容差クラスをループ全体の精度と考える。 クラス A は素子単体の値です。変換器や入力カードにはそれぞれの誤差があり、接続や取付け(挿入深さ、熱接触)も誤差を加えます。
大きな電流で測る。 数 mA を流す抵抗計では、小さな素子が 0.1 °C 単位で自己加熱することがあります。RTD 用の計器は通常、PT100 で 1 mA 以下、PT1000 で 0.1~0.5 mA を使います。
よくある質問
0 °C での PT100 の抵抗値は?
定義により、ちょうど 100 Ω です。PT1000 は 1000 Ω、PT500 は 500 Ω です。
Callendar–Van Dusen 式は ITS-90 と同じですか?
違います。ITS-90 は研究室で使う標準白金抵抗温度計の基準関数を定めています。工業用の PT100 素子は IEC 60751 で規定され、係数が固定された、より簡単な Callendar–Van Dusen 式を使います。校正済みのセンサでは、証明書に個別の A、B、C が記載されることがありますが、このツールは規格値を使います。
式が有効な範囲は?
IEC 60751 の範囲は −200~850 °C です。このツールは範囲外の値を外挿せず、受け付けません。
自分のセンサの許容差クラスは?
クラスと、その適用温度範囲はセンサのデータシートに記載されています。薄膜形の素子は、巻線形より狭い範囲でクラス A または B とされるのが一般的です。クラス AA(旧称「1/3 DIN」)は、おおむね 0~150 °C 以下に限られます。
結果を共有できますか?
はい。「結果」見出しの「リンクをコピー」で、素子と温度または抵抗値を入力済みの状態で開く URL を作成できます。